見えない世界と親しむ

色んな形で見えない世界と楽しむ

スペイン・サンチャゴ巡礼③ 不思議な声と、いただいた杖

こんにちは。久しぶりにカミーノの続きを書きます。


(当時の手帳が見当たらず、ずっと探していたのが出て来ました(笑))


過酷なピレネー越えを終え、皆とやっと宿にたどり着き、足を洗ったり


しつつとっても幸せでした。やり切った感がハンパなく、1日目なのに


もうこれで巡礼終了だよと言われても納得できそうな勢い(笑)


誰もが、スカッとした満面の笑顔でした。


最大限マックスに心は晴れていたのですが、曇り空のせいか


宿が薄暗くて陰気な感じでびっくりしました!!!大型施設だったような。


たぶん皆が人生で、さすがに今夜だけは、


パアアっと明るくてゴージャスで快適なとこに


泊まりたい気分だったのでは!?と思うのですが、それと真逆な


薄暗くてそっけなく、ベッドに湿気もあるような?ドミトリーでした(笑)


でも共にピレネー越えをした面々とも離れたくなく、


巡礼についてあまりに何も知らなすぎ、当時は


こういうものかと皆思ってた感じでした。そこで出会った人たちも


「こんな過酷な日の最後がこんな感じなんて・・・これが巡礼ってもの?」


と違う衝撃を受けていました。(笑)


併設のレストランで夕食を取って、カール達とお互いまだ


生きていることを喜び(私だけか)


(いや、あちこちのテーブルで祝杯が上がってた(笑))


誰もがぶっ倒れて大人しく寝たと思います。


皆さんたぶん爆睡だったはず。


そして翌日、起きてみるとなんと!!


ほとんどのベッドが空ですよ!!!(笑)


なんと皆さんが夜明け前には出発してるもよう・・・マジか・・・


残っていたのは、もう何回も巡礼した、余裕の方たちばかりのようでした。


自分が目覚ましを掛けてなかったくせに


どうして誰も起こしてくれなかったんだろう?と言うと


「気持ち良さそうに寝ているのを、起こす奴なんか誰もいないよ。


それに巡礼は皆、自分のペースで歩くもんだ。」とのこと。


(近年歩いた人に、今では巡礼路でも、皆スマホを使ったり


クレジットカード払いがなされていると言われ、衝撃を受けた私。)



それにしても昨日の今日で、日の出前に起きるって、


皆よくそんなことが出来るなとは思いましたが、


昨日の困難の衝撃が大きかったので、


2日目の困難に身構えるよな、気を張った気持ちもよく分かりました。


自分も出発しました。




巡礼路は、ところどころ曲がり角などで、石や建物や道上にペイントされた、


黄色い矢印マーク(→)に従って歩いて行けばよいシステムです。


歩き始めたら、道にはほとんどもう巡礼者は誰もいません。焦りました。


しかも起きてみたら膝がガクガクしており、左脚が上がらない!!


こんな状態で次の宿は一か所しかなく、おとつい受付でもらった


宿の紙では、なんと22キロ先!!そこのみ!!


今日の運命はこの脚でリュックを背負って22キロ歩くってこと。


へなちょこの自分にとって、巡礼ってなんて過酷なんだと、結構青くなっていました。(笑)



しかし、今振り返って思うのですが、私にとっては、


全カミーノの行程で、この日の道が一番好きでした。


何と言うかただただ美しい小道が続くのですが、


その自然が繊細で、心に沁みる感じ。(同じ繊細と言っても


日本のしっとりした自然とはまたどこかが違ってて)


雨だったし、しっとりはしつつも


何だか不思議な軽やかさと明るさがある道。その感じが大好きでした。


カミーノのことを思い出す度に、


あそこの行程を、もう一度じっくりゆっくり


もっと味わって歩きたい・・といつも思います。


あと、初めてのことで、そもそも外国での巡礼のイメージが


まったく付かない・分からない・頭が白紙というか、


ピレネーは終わっているのに、どこかでぼんやりと


また予期しない困難が何かあるのではないか?という


どこかに身構える感じもありました。ずっと平地なのが不思議で、今に


登りの過酷な道が現れるのではないかと思っていました。




と、ここで不思議なことがありました。


焦って必死で歩いていたのですが、私の耳元に、突然


『ボンジュー』


という男性の声が聞こえたのです。凄く近い。


びっくりして、


勢いよく振り返りましたが、誰もいません・・・


前を見ても後ろを見ても横を見ても、誰もいません・・・


???


でも、はっきり聞こえた。かなり耳元で。


訳が分からないので、一旦止まり、何!? 誰!?と


言ってみましたが、


道がしーんとしてるだけで何の返事もありません。


何と言うか、まろやかな男性の声でした。どこか嬉しそうな陽気さがあった。


しばらくそこで休憩して水を飲んだりしつつ、誰かがやって来るのを待ちました。


だいぶ待って、やっと巡礼の人が通りがかったので、(女性だよ)


「すみません、さっき私にボンジュー(ル)と呼ばれました?」と


アホなことを聞いてしまいましたが、不思議そうにいいえ?と


言われてしまいました(笑)そりゃそうか。


解決しないまま、また歩き出しました。


よく考えたら、ここはスペインなのに


ボンジューって、どういうこと???謎過ぎました。


(後年、ヒプノで自分がカミーノに関わっていた2つの人生を見ました。


そんなこんなもあって、もしかしたら


当時の馴染みの人??が、巡礼開始スタートの私に


明るく「よく戻って来たね」という歓迎の意味で


挨拶したのかなぁ???などと今では思います。焦りまくって


必死に歩いていた自分と、あのまろやかな、のんびりした声は


まったく対照的でしたが・・・)




それにしても、美しいから良かったものの、歩いても歩いてもその道は


終わらず、ずっと小道が続きました。ほとんど誰もいません。


永遠にここを歩くのかと思いました(笑)


思い出してみると、なんと言うか、歩きながら


この先の巡礼の未知さへの焦りや不安、自分の今の身体の状況、


昨日のピレネー越えの危機感や抑えていた恐れや感情、


昨日をやり遂げた爽快感や達成感や自信など、


色んな感情がばああああっと溢れつつの、美しい自然の中を


足を引きずって延々歩く感じでした。



やっとちょっと開けた所に来たところで、ベンチがあったので


脚も痛いし、膝もガクガクしてるしで腰を掛け、休憩しました。



水を飲んでいると、地元の方でしょうか、しっかりした体格の、


落ち着いた感じの初老の男性が


スペイン語??で話し掛けて来られました。英語は分からない様子でした。


でも何か私に尋ねておられます。


???


すると、ジェスチャーで、杖をつく様子をされます。


???首をかしげていると、待って、というジェスチャーをされました。


気が付くと、もう木の枝をもっておられます。


どこからか、ナタを取り出されると、勢いよくそれで木の枝を


削り始めました。


びっくりして見ていると、それは杖の形になりました。


私に!?


ついてみろとジェスチャーされたので、ついてみたら


高さも強さも丁度良い感じでした。その方は私の様子を見ていると


もう一度、持ち手の所を細く削り、もっと持ちやすくされました。


心底感激して、「ありがとうございます~~~~!!!グラシアス」と大喜びしたら、


静かに満足そうに笑われました。


お願いして、その方と杖を写真に収めました。


(この杖は、巡礼コンプリートするまで、ずっと私のお供でした!!!)


その後、その杖のお陰で、歩くのがだいぶラクになり、


何より地元の方の思わぬご親切に、ほんとに心が温かくなりました。


あの方のお陰で、脚の痛さも膝の不具合も、


もう気にならない感じでした。



やっと宿に到着し、馴染みの顔ぶれに歓迎され、ほっとしました。


公衆電話から、日本で巡礼の手ほどきをして下さった女性に


国際電話を掛け、無事を伝えました。




ああ~、なんであんなに焦ってたんだろう・・・。


美しい道を堪能して、もっとゆっくり歩けばよかったな・・・。



以上、カミーノ2日目でした。


読んで下さった方おられましたら、ありがとうございます。


また書きますね。


とんびオレンジ