こんにちは。
今日はスペイン・サンチャゴ巡礼の続きを書きます。
パンプローナからプエンタレイナまで歩きました。
前の晩、偶然、ピレネー越えのピークでカールに重い荷物を担がせた(笑)
あのオーストラリアの若い女の子、マシェリに会いました。
笑顔で順調そうでした。荷物が小さくなっていたので尋ねると、
歩いてみたら、ほとんど要らない物だったから、
捨てたり国に送り返したそうです。←カール~~~~(笑)
で、朝起きて出発の準備をしてたらですね、
その日同室だったフランスの中年女性がですね、寝起きで
「今日は一日、私と一緒にバスで市外の市場に行ってね。」
と言ったんです。は?と思いました。
「えっと、靴下のために、一日中は付き合えないよ。」と言うと
急に怒り始め、「昨日、明日私の靴下買うの手伝ってくれる?って聞いたら
いいよって言ったじゃない!!嘘ついたのか!!」と言うんです。
え?巡礼路の上で、途中でそういう店があったら、っていう話かと
思っていたので、まさか巡礼を外れて
一日市外の市場で過ごすなんて思わないよ、と言うと
「私はこんなに歳で、足にマメが出来てて痛くて
助けが必要な老人なのに、お前は見捨てるのか!!
嘘つき嘘つき!!」と怒ります。昨日までは感じよかったのに、
あまりの剣幕にあっけにとられてしまいました。
と、そこに、バーン!と威勢よくドアを開けて、マシェリが入って来ました。
「なにしてるの?〇〇、行くわよ!!」
「いやちょっとこの人が、私にバスで市場に行って靴下買うのに
一日付き合えって怒ってて。足のマメが痛いんだって。」と言うと、
「は?そんなのほっときなよ、行こう!」と言います。
フランス中年女性は、もっと怒り「お前もか!老人は大切にしなさいよ!」
とキーキー言います。が、マシェリは
「馬鹿言わないでよ。あなた何ちゃいなの?立派な大人でしょ。
我々は、靴下くらいどこでだって自分で買えるはずよ。行こ、〇〇。」
と私の腕を引っ張りました。(ピレネーの時とは別人のように
めちゃくちゃ頼もしい)
キーキー叫ぶ女性を後に、我々はその宿を脱出しました。
歩き始めてすぐ、昨日の不思議なヨギ、サーシャの後ろ姿を見つけました!!
とっても足が速いです。ほんとに手ぶらで裸足でした。
私は何故か慌ててカメラを取り出し、その後ろ姿を写真に撮りました。
(今は分かるのですが、私はフランス女性ではなく、あのヨギのほうと
もっと話してみるべきでした。でも当時はそれが分からなかった。)
さっきのゴタゴタを、ちょっと気にしてる私にマシェリは
「ナンセンス。大人が一緒に靴下買えなんて、
あのおばさん頭がおかしいだけよ。そんなことも一人で出来ないんなら
巡礼になんて来るべきじゃない。あんな変な奴、忘れなさい!
いい?〇〇、私たちは過酷な巡礼路の上にいるの。
誰もが自分の巡礼を完遂できるのか、それだけでいっぱいいっぱい。
特にああいう、こっちを便利に取り込もうとする人間からは
走って逃げなきゃダメ!!しっかりしなさいよ!!」
と、いたってクール。
ほんとにピレネーで泣いてた子と同一人物???
しかも笑えることに、まだ19歳だと言うのです。25くらいかと思ってた。
西洋女性の態度のはっきりさには感銘を受けました。
それにしても素晴らしい巡礼路の景色でした。もしかしたら私が
人生で見た、一番広大な平地の景色だったかもしれません。
ちょっと高い山に登ると、とにかく遥か遠くの平地のそのまた向こうに
小さな△があって、それも山なのです。その向こうにもまだ小さな△がありました。
人生初に見た、あまりに広大な景色で、あっけにとられて見惚れていました。
ある所では広大な景色の中を一本道が続き、
顔見知りだったトロンボーンを抱えたイタリアの巡礼者が、
どんどん小さくなって行く様子は、まるで絵本の物語りのようでした。
私が知っていた巡礼路の風景は、過酷なピレネー、緑溢れる小道、市街地、
などだったので、初めての広大な景色に圧倒されました。
ポピー咲く小山では、他の少し太ったイタリア人のおじさんにも会いました。
広大な絶景なので、感動してオペラを歌って歩いていました(笑)
影絵のような数人の巡礼の姿が、風の吹く小山のてっぺんに
モニュメントか現代彫刻のように設置されていました。
風が、びゅんびゅん吹いていましたが、そこで記念にマシェリの写真を撮りました。
その後、足の速い前倒しのマシェリに会ったのは、確かあとたった1回だったので、
この写真は思い出深いものになりました。
巡礼は皆が基本、ほとんどの人が自分のペースで歩きます。
その方が身体がラクなのです。たとえ誰かとしばらく一緒に歩いても
人に合わせると歩きがしんどくなって、どこかでお互い離れます。
それぞれの歩調とペースは、その人の運命のようなもので、
皆それによる別れを理解します。
巡礼宿も同じとは限らず、夜中にも歩く人もいるし、
行ける限り遠くの巡礼宿に泊まろうとする人もいます。
なので、どこでまた会えるのかは未知数。
道すがら、ピレネーで助けてもらったカールとアンにも会ったのですが、
広大な風景の中で、思わず三人で肩を抱いて別れの涙もしました。
(彼らと私はペースと歩調が全く違うので。)
プエンテ・ラ・レイナには110mに渡る11世紀の橋があったようです。
王妃の橋と言われているもよう。
(古い橋を渡った気がするが、基本観光に興味ないため、どこだったか分からず)
テンプル騎士団に関係あったらしく、もっとちゃんと意識してればよかった・・・。
その日は24キロ歩いたようで、最後の方は結構普通の道路沿いの市街地でした。
さっき会ったオペラ歌ってたイタリア人アントニオが宿にいました。
どういう訳か、その彼がうれしそうに走って来て、
「〇〇、日本人が、日本人がいたよ!!」
と、私に言うのです。巡礼路で日本人を見たことがなかったので
興味は引かれましたが、それよりもなんでこの会ったばかりの
イタリアのおじさんが、こんな息を切らして私にそれを走って教えに来るのか、
そっちの方にびっくりしたので尋ねましたら
「ほんとに遠い東の国から来て、貴女はさぞかし寂しいだろうと思って。」
とのことでした(笑)←いや全然
あんまりうれしそうだったので仕方なく?、その日本人とやらを探して
言われた所に行ってみると、
日に焼けた背の高い若い男性がいました。向こうも初めて日本人見たと言います。
聞くと、青果市場バイトのお兄さんで、ツールドフランス観に毎年来てて、
そのまんま帰るのも飛行機代がもったいないので、人に聞いたカミーノを
俺もいっちょう歩いてみるかと思って来たそうです。
いやあ、そんな人も巡礼路にいるんですね~、驚きました。
無宗教で、巡礼のつもりでは全然ない、文化探索、とのこと。
見ると、物凄い荷物です。なんと基本キャンプの自炊だとか。
逞しい~~。
その日はそれで終わりました。色んなことがありましたが、
あの広大な景色を生まれて初めて見れたことが、
島国育ちの自分には、かなり印象に残りました。
特に不思議な出来事はありませんでしたが、あの広大さがご褒美だったかな。
以上、カミーノの話でした。
読んで下さった方おられましたら、ありがとうございます。
また書きますね。
とんびオレンジ